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Cardiovascular Outcomes with Tirzepatide versus Dulaglutide in Type 2 Diabetes

最終更新日:2026年4月27日

タイトル

SURPASS-CVOT 試験

著者

Nicholls et al.

掲載誌

N Engl J Med 2025;393:2409-20.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

PICO

P(患者)

40歳以上、HbA1c 7.0~10.5%、BMI≥25、

確立したASCVD(冠動脈疾患・脳卒中・末梢動脈疾患いずれか1領域)を有する2型糖尿病患者

(過去3か月以内のGLP-1受容体作動薬使用者・重症心不全・膵炎歴などは除外)

I(介入)

チルゼパチド(GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬)

2.5 mgから開始し4週ごとに2.5 mg増量、最大15 mg週1回皮下注

C(比較対照)

デュラグルチド(選択的GLP-1受容体作動薬)

1.5 mg週1回皮下注(固定用量)

*プラセボ対照ではなく実薬比較(active comparator)

O(主要アウトカム)

主要エンドポイント:3-point MACE

(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合)

副次エンドポイント:総死亡、4-point MACE、心不全入院/CV死、eGFR変化(CKD高リスク群)、

HbA1c・体重・血圧・中性脂肪・LDL変化量

研究方法

研究デザイン・方法

試験デザイン

多施設共同・第3相・二重盲検・実薬対照・非劣性試験(SURPASS-CVOT)

30か国640施設

試験期間

登録:2020年5月~2022年6月

追跡中央値:4.0年

登録数

スクリーニング16,979名 → ランダム化13,299名 → modified ITT解析対象13,165名

(除外134名:適格基準不適合のため試験薬中断、規制当局要請)

割付

1:1ランダム化(国・SGLT2阻害薬使用の有無で層別化)

二重盲検:デュラグルチド群にダミー用量漸増を実施してブラインド維持

統計設計

非劣性マージン:HRの95.3% CI上限 < 1.05

優越性:上限 < 1.00

必要イベント数1,615件(検出力90%、デュラグルチド群年間イベント率3.5%を仮定)

実際の確認イベント数:1,663件(中間解析1,078件時に実施)

結果

エンドポイント

チルゼパチド (N=6,586)

デュラグルチド (N=6,579)

HR (95% CI)

【主要エンドポイント】

 

 

 

3-point MACE(CV死・MI・脳卒中)

801件 (12.2%)

862件 (13.1%)

0.92 (0.83–1.01)

 P値(非劣性)

P=0.003

非劣性成立

 P値(優越性)

P=0.09

優越性非成立

【主要副次エンドポイント】

 

 

 

心血管死

367件 (5.6%)

408件 (6.2%)

0.89 (0.77–1.02)

非致死的心筋梗塞

311件 (4.7%)

357件 (5.4%)

0.86 (0.74–1.00)

非致死的脳卒中

229件 (3.5%)

249件 (3.8%)

0.91 (0.76–1.09)

4-point MACE(上記+冠動脈血行再建)

1,089件 (16.5%)

1,217件 (18.5%)

0.88 (0.81–0.96)

CV死+心不全入院

512件 (7.8%)

557件 (8.5%)

0.91 (0.81–1.03)

総死亡

566件 (8.6%)

669件 (10.2%)

0.84 (0.75–0.94)

【代謝指標の変化(36か月)】

 

 

 

HbA1c変化量

−1.66%pt

−0.88%pt

差 −0.78%pt

体重変化率

−11.6%

−4.8%

差 −6.8%pt

収縮期血圧変化

−6.2 mmHg

−4.1 mmHg

差 −2.1 mmHg

中性脂肪変化率(24か月)

−24.2%

−10.2%

差 −15.6%pt

eGFR変化(CKD高リスク群)

−5.72 ml/min/1.73m²

−8.90 ml/min/1.73m²

差 +3.17

コメント

コメント・批判的評価

強み

•   規模:1.3万例超・中央値4年追跡のイベント駆動型大規模RCT

•   二重盲検:デュラグルチド群にダミー漸増スキームを採用し真のブラインドを担保

•   実薬比較の合理性:GLP-1受容体作動薬のCV有益性が確立済みのためプラセボ対照は倫理的に困難。デュラグルチドを対照とする設計は現実的かつ妥当

•   非劣性マージン:FDA協議のもとデュラグルチドの有効性の50%以上を保持する1.05に設定(厳格かつ根拠明確)

•   エンドポイント判定:独立委員会による盲検化判定(adjudication)

•   代謝アウトカムの充実:HbA1c・体重・血圧・脂質・eGFRと包括的

•   競合リスク解析(Fine-Gray法)を事後追加し結果の頑健性を確認

限界・注意点

•   【比較の問題】プラセボ群が存在しないため、チルゼパチドの対プラセボ効果量は直接算出できない

•   【非劣性の限界】HRの95.3% CI上限は1.01であり、非劣性は成立するが優越性(上限<1.00)には到達していない(P=0.09)

•   【実薬対照のバイアス】両群とも試験薬に加え他の降糖薬・スタチン等を使用(open-label add-on)。試験後半にSGLT2阻害薬の追加がチルゼパチド群でやや少なく、結果に影響した可能性がある。

•   【代謝指標と心血管アウトカムの乖離】体重−6.8%・HbA1c−0.78%ptのプラスアルファの改善があるにもかかわらず主要心血管アウトカムの有意な優越性は示されなかった。GIP受容体の心血管への関与やデュラグルチドの「天井効果」が示唆されるが未解明

•   【多様性の不足】白人が80%超。日本人など東アジア集団での適用性は限定的

•   【代謝指標の評価時期】LDLは24か月、eGFRはCKD高リスク群に限定(全体の約23%)

•   【スポンサーリスク】Eli Lillyが試験設計・実施・一次解析を担当(データはMonash大学で独立検証済みだが利益相反は存在)

糖尿病診療への示唆

•   T2DM+確立したASCVD患者において、チルゼパチドはデュラグルチドに非劣性のCVアウトカムを示しつつ、体重・血糖・血圧・腎保護で追加ベネフィットを有する

•   総死亡のHR 0.84(95% CI 0.75–0.94)は注目されるが、事前設定された検定順序での有意差ではなく、探索的所見として慎重に解釈すべき

•   処方選択上、GI有害事象(特に下痢・悪心)の頻度増加と薬剤中止率の上昇(13.2 vs 10.1%)は実臨床で考慮が必要

•   eGFR保護効果(差+3.17 ml/min/1.73m²)は腎合併症リスクの高い患者への選択において参考になる

•   「優越性未達」を以ってチルゼパチドのCV効果を過小評価すべきでない。実薬対照試験では高いハードルであることを認識した解釈が重要

備考

安全性

有害事象

チルゼパチド

デュラグルチド

何らかの有害事象

89.6%

88.7%

重篤な有害事象

31.8%

31.9%

投与中止に至る有害事象

13.2%

10.1%

胃腸障害(全体)

42.5%

35.9%

 悪心

25.1%

22.4%

 下痢

24.8%

19.1%

重症低血糖

0.7%

0.7%

急性腎障害

3.4%

2.7%

膵炎(判定委員会評価)

0.6%

0.6%

甲状腺髄様癌

2例 (<0.1%)

0例


資金:Eli Lilly
試験登録:ClinicalTrials.gov NCT04255433

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