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シックデイ・血糖悪化のエピソード
更新日:2025年10月16日
体調を崩したときや、何気ない生活習慣の中でも、血糖が思わぬ形で変動することがあります。けれども、正しい対応や工夫を知っていれば、安心して乗り越えることができます。
シックデイ・血糖悪化のエピソード
事例1.胃腸炎で食事が摂れないにもかかわらず、糖尿病薬をきちんと飲み続け低血糖になった2型糖尿病の70歳代男性Aさん
【シックデイ時の対応を知っておきましょう】
Aさんはいつも処方された薬を間違えることなく、きちんと飲んでいます。
数日前から下痢がはじまり、はじめは食事を食べることができていましたが、今日は水分は何とか飲めているものの、食欲がなく食べられません。
そのような状況でも、処方された薬は医師の処方通り飲んでいました。薬を飲んだあとにAさんはぼんやりしてしまい、救急車を呼んで病院を受診しました。受診したとき、体温は38.0度以上あり、血糖値は45mg/dLしかありませんでした。

だって、飲まないといけないでしょう?

Aさんは、糖尿病の治療として、スルホニルウレア薬(SU薬)を飲んでいました。
SU薬はそのときの血糖値の高い低いにかかわらず、血糖値を下げる働きを持つインスリンを分泌させる効果があります。食事が摂れないときに飲んでしまうと、必要以上に血糖値を下げてしまい、低血糖になる可能性があります。
今回Aさんは食事が食べられないなかでこの薬を飲んだため、低血糖になったと考えられます。
詳しくは「シックデイ」をご覧ください。
事例2.喉が渇いて炭酸ジュースを1日2L飲んだところ、血糖値が悪化した2型糖尿病の40歳代男性Bさん
【清涼飲料水・経口補水液の飲み過ぎは避けましょう】
Bさんは食事療法と運動療法で治療しています。これまでHbA1c値は6.5%程度で血糖値も良好な状態でしたが、このごろ喉の渇きがひどく、すっきりしません。炭酸のジュースを飲むといくらかよくなるので、喉が渇いたときに炭酸ジュースを飲むようになりました。気付けば1日に2L飲んでいます。
定期外来受診で血液検査をしたところ、HbA1c値9%、血糖値450mg/dLと悪化していました。

でもHbA1c値や血糖値がとても高いみたいです。なぜでしょうか。



もしかして、よくなかったですか?
Bさんが感じた喉の渇きは、血糖値が上昇したときに自覚する「口渇」症状でした。
食事療法と運動療法で血糖管理をしていましたが、最近仕事が忙しくなり、夕食の時間も遅く、さらにストレスでたくさん食べてしまい、それまで行っていた運動もできなくなりました。そういった生活の変化のなかで、血糖値が高くなっていたために、口渇の症状がでたといえます。
たとえば、お茶や水、甘い飲み物でも人工甘味料を使用したカロリーオフのものがおすすめです。
また、体調が悪いときに飲む経口補水液にも糖分が多く含まれるものがあります。
市販のジュースや缶コーヒー・経口補水液を飲む際は、含まれる糖分・カロリー量を確認しながら飲みましょう。また、牛乳はからだによいものと考えている方が多いですが、糖分・カロリーともにかなり多く含まれており、飲む量について注意が必要です。
事例3.季節の果物が好きで毎食果物を食べていたところ、血糖値が高くなった2型糖尿病の60歳代女性Cさん
【果物の取りすぎに注意しましょう】
Cさんは食事療法と運動療法で血糖管理をしています。数ヵ月前まではHbA1c値は6.5%程度でしたが、ここのところHbA1c値が8%台の状況が続いています。


Cさんから話を聞くと、家族構成が変わったこともあり、もらい物の果物を食べる量が増えたそうです。リンゴなら1日2個、ミカンは5個、イチゴは1パック全部食べていました。
果物は1日80kcal程度の摂取が望ましいといわれています。
80kcalの果物とは、例えば、「リンゴ1/2個」、「ミカンMサイズ2個」、「バナナ1本」です。これは1日の中での摂取量なので、80kcal分を小分けにして毎食後に摂取することは可能です。適切な量の果物を摂取して、季節を楽しんでいけるといいですね。
事例4.自覚症状がなく「糖尿病は治った」と思い通院をやめたところ、入院が必要なほど高血糖になった2型糖尿病の40歳代男性Dさん
【通院は中断せずに続けましょう】
Dさんは5年前に2型糖尿病と診断され、飲み薬で治療を継続していました。
しかし治療を始めて1年ほど経過すると仕事が忙しくなり、体調もよくなったので「糖尿病は治った!」と考え、自分の判断で飲み薬をやめ、通院も中断してしまいました。
数年後、喉が渇き水分を多く摂るようになり、尿の回数が増え、からだはだるく、視界はくもり、煤(すす)のようなものがみえてきたため、心配になり病院を受診しました。血液検査の結果、HbA1c値12.3%、血糖値は500mg/dLあり、眼科では増殖糖尿病網膜症と診断され、入院することになりました。


悪化すると網膜出血や網膜はく離などが起こり、視力が低下したり失明することもあります。糖尿病網膜症は適切な治療を行うことで予防でき、いったん発症したとしても重症化するのを防げます。定期的に眼科で網膜症の検査をしましょう。
糖尿病と診断されたら通院を継続します。何かあるときは自身の判断だけで通院を中断せずに主治医と相談しましょう。
糖尿病網膜症について詳しくは「網膜症」をご覧ください。
事例5.血糖値が高くなった原因がわからなかったが、医療スタッフと状況を整理するなかで高血糖の原因を見つけられた2型糖尿病の50歳代男性Eさん
【高血糖の原因を考えましょう】
Eさんは仕事が忙しく、毎日のように残業をして帰宅する生活を送っていました。
食事時間は不規則になりがちでしたが、自分でできることを考えながら食事内容には気を付けていました。
ある日、定期外来受診で主治医から血糖値が高いといわれましたが、本人は日常生活に変化がないことから、その理由がわからず困っていました。


残業になる日は夕方に軽食を摂って、帰宅してからしっかり夕食を食べています。食事時間は不規則ですけど食事内容は自分なりに気を付けています。

Eさんが食事で気を付けていることは何ですか。

Eさんがいつもインスリン注射をしている場所を看護師が確認すると、腹部の左右2ヵ所に硬結(インスリンボール)がありました。
硬い部分はインスリンの吸収が悪くなるため、この場所に注射を打ち続けると血糖値が下がらずに結果、高血糖になる場合があります。毎回、注射を打つ場所を少しずつ変えることが重要です。
いつも行っているインスリン治療や食事について、専門スタッフとのコミュニケーションを通して時々見直していくことは重要です。
食事については、からだによいと思って1日3回食べていた甘いヨーグルト、野菜が入っているからと毎日1L以上飲んでいた野菜ジュース、おにぎりと組み合わせて食べていた野菜サンドイッチなどは、いずれも糖質(炭水化物)が多く含まれていることがわかりました。本人から栄養について学びたいと希望があり、管理栄養士の栄養相談を受けました。
その後、Eさんは炭水化物に偏らないように食事の内容や量に気を付け、インスリン注射は毎回部位を変えて打ったところ、血糖値が高い状態は改善しました。
事例6.高齢・1人暮らしで無自覚性低血糖を起こしていた2型糖尿病の80歳代男性Fさん
【無自覚性低血糖に注意しましょう】
Fさんは1人暮らしで、インスリン注射をずっと行ってきました。食事や飲み薬も自分で管理し、注射の手技も問題なく行えており、HbA1c値は6%台で経過しています。
しかし、この値は一般的にインスリン治療を行っている80歳代の方のHbA1c値としては低めです。看護師が低血糖を起こしていないか確認したところ、週に1回程度、低血糖のような症状があり、すぐにブドウ糖を摂って自分で対応していることがわかりました。
Fさんは「日常生活で困っていることはないからこのまま様子をみてもいいですか?」と言っています。


ご高齢で糖尿病歴も長いから、他の時間帯にも無自覚低血糖を起こしているかもしれない。血糖値の推移を確認したほうがよいか、主治医に状況を報告して確認してみよう。
医師に情報を共有したところ、24時間グルコース値を記録できる間歇スキャン式持続血糖測定器で検査を行うことになりました。モニタリングの結果、寝ている間にも血糖値が低い時間帯があることがわかりました。現在、インスリンの投与量を減らして低血糖を起こさずに、血糖管理をしています。
Fさんは75歳以上、認知機能は正常であり、日常生活の身の回りのことはすべて自分で行っていました。一方で、インスリン治療を行っており、低血糖のおそれがある治療薬を使用していたため、高齢者糖尿病の血糖管理としては、HbA1c値の下限が7.0%、8.0%未満を目標に行うのが安全です。
事例7.インスリンポンプを同じところに刺し続けたことで、インスリンの効きが悪くなっていた1型糖尿病の40歳代男性Gさん
【インスリンの正しい注射部位を知りましょう】
Gさんは、インスリンポンプを使っています。
本人の生活状況に変化はなく体重の変動もありませんが、もともとHbA1c値が7%台だったのが9%台に悪化しています。





Gさんのお腹を確認すると、へその左右に4cmほどの硬い部分(硬結)がありました。インスリンポンプのチューブは3日ごとに適切に交換していましたが、いつもお腹の限られた範囲に着けていたことで硬結ができ、その影響もあって血糖管理が難しくなっていたことが判明しました。その後、毎回、カニューレを装着する場所を変えることでHbA1c値が高い状態は改善しました。
おわりに
糖尿病がある方の事例をお示ししましたが、一人ひとり病状や治療状況、生活状況などが違います。糖尿病とつきあっていくなかで、心配や困りごとがある場合は、医療スタッフに相談しましょう。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024