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糖尿病の合併症のエピソード
更新日:2025年10月16日
ここでは、糖尿病に関わる合併症のエピソードをご紹介します。
糖尿病の合併症のエピソード
事例8.腎機能が悪化し、透析を導入することになった2型糖尿病の70歳代男性Hさん
【透析導入】
Hさんは20年前に2型糖尿病と診断され外来通院をしていましたが、少し前から足のむくみに気が付きました。主治医には以前から腎臓の機能が悪化してきているので、透析が必要になるかもしれないといわれていました。最近は呼吸の苦しさを自覚するようになり、動くのもつらくなっています。血液検査を行うとカリウムの値が高く、血清クレアチニンは5mg/dLに上昇して、医師から透析の導入を勧められました。Fさんは以前にも透析が必要になるかもといわれてはいましたが、このタイミングとは思ってもいなかったので、びっくりすると同時に、このあと自分はどうなるのだろうと不安になりました。

今まで何とかやってきたけどね。
これからどうなるのかな?

透析といわれて不安ですよね。

腎臓を守れなかったな……

今回透析を勧められましたけど、たんぱく質を制限した食事を頑張ってきたから、今まで透析せずにいられたのだと思います。
透析には2つあって、「シャント」という透析のための血管を手術で作って、透析のクリニックに週3回通う「血液透析」と、お腹に管を入れて毎日自宅で透析を行う「腹膜透析」という方法があります。
どちらがいいかは先生の説明を受けてから考えましょう。

透析といっても、いろいろと種類があるんだね。
先生から詳しく話を聞いてみるよ。

話し合いながら一緒に考えていきましょう。
Hさんは、糖尿病を発症してから通院を続け、治療に取り組んできました。
糖尿病腎症が進んだため医師の指示に従って、たんぱく質を制限した食事を作ったり、自分で調理するのが難しいときは、宅配食を利用したりしています。
Hさんは医師から「透析導入の必要がある」と言われ、しっかり説明を聞いた上で、シャントを作成して血液透析を行うことに決めました。透析導入に伴い、利用できる医療費を軽減できる公的な支援制度として身体障害者手帳や特定疾病療養受療証の申請を行い、現在は自宅近くの透析クリニックで週3回透析を行いながら、趣味の活動も行っています。
腎症の進行を予防するために、たんぱく制限食を開始するタイミングがあり、それまでのカロリー制限食と比べると、炭水化物や脂質を食べる割合が増える場合があります。ご自身の生活に合ったたんぱく制限食について、管理栄養士に相談しながら工夫します。
また、透析にも「血液透析」「腹膜透析」と種類があります。透析を導入する場合に受けられる医療費を軽減できる公的な支援制度もありますので、医師や看護師、社会福祉士などから話を聞き、お住まいの市区町村などに確認してみるとよいでしょう。
糖尿病腎症について詳しくは「腎症」をご覧ください。
糖尿病腎症の食事について詳しくは「糖尿病の食事のはなし(実践編)」を、透析治療については「腎症」を、また透析治療で利用できる公的な支援制度については、「糖尿病と社会保障(糖尿病の方が受けられる公的支援)」をご覧ください。
事例9.夜間に胸の痛みが出現し症状がおさまらないために救急車で病院に行き、心筋梗塞を発症していた2型糖尿病の60歳代男性Iさん
【心筋梗塞】
Iさんは2型糖尿病歴10年で、飲み薬で治療しています。ある日、夕食後に休んでいると急に胸が痛くなり、安静にしていてもおさまらないので、妻に救急車を呼んでもらいました。



ステントという管(チューブ)を血管に入れて拡げる治療を行います。
~冠動脈ステント治療後~

胸が痛くなるなんて、思ってもいませんでした。
これから僕は何に注意して過ごしたらいいですか。

まずは禁煙しましょう。そして今回挿入したステントが詰まらないように飲み薬を飲みましょう。
糖尿病や脂質異常症の管理もとても大事ですので、食事・飲み薬の管理を続けましょう。また、心臓の状態をみて、リハビリテーションをしながら体重を減らすことも心がけるとよいと思います。
Iさんは来院後の検査で心筋梗塞が見つかり、ステント(チューブ)を入れて血管を拡げる治療を行いました。ステント治療を行った後は、医師から勧められた禁煙と内服治療・食事管理を行い、心臓リハビリテーションにより望ましい運動処方を受けて体重管理に取り組んでいます。
動脈硬化が原因であり、血管内皮にプラークという脂質を含む塊ができ、それが破裂することで血管が詰まります。
動脈硬化の予防には、血糖値をよい状態に保ち、血圧・脂質・体重などにも注意しておくことが必要です。たばこは他にも、がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などさまざまな疾患の原因となりうるので、禁煙をしましょう。
たばこには依存性があるので、一人で禁煙するのは難しいといわます。禁煙治療は保険適用になっていますので、医療スタッフに相談してみてください。」
心筋梗塞などについて詳しくは「大血管症:冠動脈の病気」をご覧ください。
また、食事の献立については、「糖尿病の食事のはなし(献立編)」や、日本動脈硬化学会が公開している「The Japan Diet 動脈効果を知る×動脈効果を予防する食事」も参考にしてください。
事例10.右手と右足が思うように動かせないため救急車で病院に行き、脳梗塞と診断された2型糖尿病の80歳代女性Jさん
【脳梗塞】
Jさんは夫と2人暮らしで、これまで問題なく生活できていました。
ある日、昼食を食べていたところ、お箸がいつものように持てないことに気が付きました。夫はJさんに声をかけましたが、うまく話せないのか、言葉がスムーズにでてきません。夫は「これはおかしい!」と思いすぐに救急車を呼びました。

声をかけたけど、うまくしゃべれないみたいなんです。



MRI検査の結果、左側に脳梗塞があることがわかりました。
まず点滴の治療をして、飲み薬の治療も続けましょう。右手・右足の機能が回復するように、リハビリ治療も行います。
Jさんはうまく話せませんが、こちらが伝えていることは理解できるので、質問するときは簡単に答えられる聞き方や、話すときはJさんのペースでゆっくり伝えてもらうなどの工夫をしましょう。
Jさんは救急車で病院に到着後、MRIなどの検査を行いました。左側の脳梗塞と診断され、右手足の動かしにくさや言葉の出にくさがみられています。現在も治療を受けながら、自宅に帰ることを目指して、リハビリテーションができる病院で治療を受けています。
健康を維持するために時々生活を見直してみるとよいでしょう。
脳梗塞について詳しくは「大血管症:脳血管障害」をご覧ください。
事例11.体重が増えて自分で足のケアができなくなっていたところ、巻き爪が原因で足病変を起こした2型糖尿病の70歳代男性Kさん
【足病変】
Kさんは最近体重が増え、お腹が出てきたことで前かがみになれず、自分の足がみえなくなり、足の爪切りができなくなりました。また、糖尿病による末梢神経障害があり、足の感覚が鈍くなっています。
ある日、Kさんは靴下に血が付いていることに気が付きました。すぐに病院を受診すると、足の親指の巻き爪が皮膚にくい込んで出血して、傷は膿(う)んで足の甲まで赤く腫れており、蜂窩織炎(ほうかしきえん)と診断されました。
血糖値が高いこともあり、入院して治療することになりました。Kさんは痛みを感じることはなく日常生活を送れていたため、医師から入院して治療するといわれたことに驚いています。


感染のコントロールと傷の治りをよくするためには、血糖値をよくすることがとても大事です。


入院して抗生剤の点滴治療と傷の処置を受けることで、Kさんの足の傷は改善して退院できました。自宅でも食事に気を付け、体重は少しずつ減少しています。妻の協力のもと、足浴と軟膏での治療を続けて、傷は治ってきました。フットケア外来では、看護師から足の洗い方、足に傷を作らないための注意点、足の観察方法を学んでいます。
自分で足の爪切りができることを目標に、日々食事療法にも取り組んでいます。
足のトラブルの発見や治療開始が遅れると、感染が広がり、足壊疽や足切断につながる可能性があります。
特に、糖尿病の神経障害がある方は、足の病気に気が付かず、悪化することが多いといわれています。
足を観察する習慣をつけることはとても大切です。また傷があることに気付いた場合は、早めに診察を受け、治療をする必要があります。まずは、フットケアの方法について知りましょう。
糖尿病足病変について詳しくは「糖尿病足病変」をご覧ください。 神経障害について詳しくは「神経障害」を、フットケアについて詳しくは「フットケア」をご覧ください。
事例12.足の傷に気付いたが、痛みがないため受診せずに様子をみていたら、進行した足潰瘍となり足切断に至ってしまった2型糖尿病の50歳代男性Lさん
【足病変・足切断】
Lさんは立ち仕事をしています。足に傷ができていることに気が付いていましたが、痛みもなく「治るだろう」と思って、様子をみていました。しかし、気付いたときにはかなり膿(う)んでおり、傷もじくじくして靴や靴下も履けない状況だったため病院を受診しました。潰瘍と炎症の状態が深刻だったことから、入院して抗生剤の点滴治療と傷の処置を受けましたが改善することはなく、医師から足の切断が必要といわれました。


手術のあと、経過をみてリハビリを行います。歩くために義足を作ることも可能です。先生に相談してみましょう。
残っている方の足は今回のように切断することがないように、毎日きれいに洗ってよく観察して、異常に気が付いたらすぐに受診してください。
Lさんは、膝から下を切断することになりました。入院中の血糖管理も手術の経過も良好で、リハビリでは義足を着けて歩く練習を頑張り、無事に退院して日常生活を送っています。Lさんは切断した断面の皮膚の観察や、もう片方の足の観察をこまめに行い、セルフケアを頑張っています。
「いつか治るのではないか」と経過をみるのではなく、普段から自分で足に傷はないか確認して(フットケア)、異常に気が付いたら早めに皮膚科受診や主治医に相談して早期発見・早期治療につなげることが重要です。
糖尿病がある方に起こりやすい足のトラブルについて詳しくは「糖尿病足病変」をトラブルへの対応については「フットケア」をご覧ください。
おわりに
糖尿病がある方の事例をお示ししましたが、一人ひとり病状や治療状況、生活状況などが違います。糖尿病とつきあっていくなかで、心配や困りごとがある場合は、医療スタッフに相談しましょう。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024