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糖尿病と安心して暮らすためのヒント
更新日:2025年10月16日
糖尿病とともに安心して暮らすためには、さまざまな場面での工夫が大切です。
実際の事例を通して、そのヒントをお伝えします。
自分に合った治療を選ぶ
事例13.カーボカウントとインスリンポンプの導入を医師から提案された1型糖尿病の20歳代女性Mさん
【インスリンポンプとカーボカウント】
Mさんは大学生です。交友関係や活動範囲が広くなるのに伴い、友人と外食する機会も増えました。人前でペン型のインスリン自己注射を行うタイミングがつかめなくなり、食前のインスリン注射は食後や帰宅後に投与することが増えました。
外食時は普段自炊して食べているものと異なり、スイーツを食べた時などはインスリン必要量がわからなくなり、血糖値が高くなる時間帯が増えました。



~持続皮下インスリン注入療法導入後~

病院の栄養相談で教えてもらったカーボカウントは、これから食べるものの糖質量を計算してインスリンポンプに入力すると、自動でインスリン投与量が表示されるので、食後の高血糖は減り血糖管理は改善しました。
Mさんはリアルタイムの持続グルコースモニタリング(rt-CGM)機能付きのインスリンポンプを導入しました。 同時に、食事の糖質量に対して必要インスリン量を計算するカーボカウント法も導入し、その後はHbA1c値6%台で経過しています。学業に専念しながら大学生活を楽しんでいます。
一定の血糖値より低下した場合や、低下を予測した場合は、自動でインスリン投与を停止する機能もあり、低血糖も予防できます。
カーボカウントは、食事中の糖質の量に合わせてインスリン量を調整する方法です。
糖質と食物繊維を合わせた炭水化物は食事の中の主要な栄養素のひとつであり、お米やパン、麺類などの主食に含まれ、食直後の血糖値の上昇に大きくかかわります。
他の栄養素であるたんぱく質や脂質でも血糖値はゆっくりと上昇しますが、カーボカウントでは、より早く血糖値が上がる炭水化物に注目します。
食事前に1食あたりの糖質量を計算し、その量に対して必要なインスリン量を投与することで食後の血糖上昇を抑える方法です。
インスリンポンプについて詳しくは「1型糖尿病の薬物療法:インスリン治療」を、カーボカウントについて詳しくは「カーボカウントについて」をご覧ください。
事例14.妊娠を希望している1型糖尿病の30歳代女性のNさん
【糖尿病がある方の妊娠・出産】
Nさんは、1型糖尿病と診断されインスリン頻回注射療法を行いHbA1c値7%台で経過しています。妊娠・出産の希望があることを医師に相談すると、計画妊娠が必要であることを説明され、妊娠前に眼の網膜症と腎臓の状態を評価する必要があると伝えられました。


糖尿病の網膜症や腎症がある方の場合は、妊娠によって悪化するリスクがありますので、妊娠前に合併症の状態を調べておくことが大切です。
もちろん、赤ちゃんは高血糖以外にも、感染症や、環境・遺伝など、さまざまな影響を受けるので、妊娠をしたら産科の先生と連携して治療を行なっていきます。
Nさんはその後、検査を行い合併症の問題がないことを確認し、血糖管理を行い、無事に妊娠して出産に至りました。
妊娠前、妊娠中、周産期、授乳期にはインスリンを使用します。
妊娠中は胎盤ホルモンの影響でインスリン抵抗性が増えるので、血糖値は高くなるため、もともと糖尿病がなかった方でも妊娠中は高血糖になることがあります。これを、妊娠糖尿病といいます。
糖尿病治療中の妊娠について詳しくは「妊娠と糖尿病」をご覧ください。
介護サービスを利用し、安心して暮らす
事例15.フットケアを通して介護サービスを利用し、うまく糖尿病とつきあっている2型糖尿病の70歳代男性Oさん
【セルフケアが困難な場合は、訪問介護サービスの利用も検討しましょう】
Oさんは1人暮らしで自立した生活を送っています。フットケアとしてシャワーで足を洗ったり、足の爪を切ったりといったセルフケアができていました。
しかし膝が曲がらなくなってきたことや、足に手が届きにくくなってきたことに加えて喘息もあるため、自分一人では十分にシャワーや爪切りが行えなくなってきました。
ご本人は自宅での生活を続けたいと希望しています。






ケアマネジャーが本人・家族と相談した結果、訪問ヘルパーが週3回訪問して、買い物、食事の準備、足浴サービスを導入することになりました。
その後も月に1回フットケア外来を受診し、自身でも実施可能な足のセルフケアを行い、足病変を起こすことなく経過しています。
足病変について詳しく知りたい方は、事例12や、「糖尿病足病変」、「フットケア」もご覧ください。
それぞれの状態や状況に合わせながら、自宅で実施できるセルフケア方法を、医療スタッフと一緒に考えていきます。
事例16.本人・家族ともに認知症が進み、インスリン治療が難しくなってしまった2型糖尿病の70歳代女性Pさん
【認知症がある方の糖尿病治療】
Pさんは夫と2人暮らしをしています。最近もの忘れが増えたため病院で検査を受けたところ、認知症と診断されました。自分で頻回インスリン注射を行っていましたが、このところ自分で管理することは難しくなっています。
胃がんを患ったことで食欲も体力も低下しており、作ってもらえば食事を口に運ぶことはできますが、数口しか食べられない状況が続き、低血糖も心配です。
自宅での生活のキーパーソンである夫も認知症があるため、身の回りの世話や家事を任せることはできずに困っていました。
2人だけの生活は大変ですが、今後も今までのように2人で一緒に自宅で過ごしたいと希望しています。

食事前にインスリンを打たないといけないことはわかってるんだけど、近ごろはインスリン注射のやり方がわからなくなるんですよ。

インスリン注射の打ち方?僕に教えてくれたの?覚えてないなぁ。

医師に相談したところ、食前のインスリンを中止して、飲み薬の調整を行い注射の回数を減らせました。同時に介護保険の申請を行い、訪問看護師に注射や血糖測定を実施してもらい、食事は夫婦分の宅配食を利用し、掃除と洗濯はヘルパーが来てくれることになりました。また入浴サービスも受けられて、サポートを受けながらこれまで通り2人で自宅での生活を続けています。
治療のことで疑問に思ったり、行政の支援を受けたいと思ったりしたときには医療スタッフにご相談ください。
もしものときの準備
事例17.いつ災害が起きてもいいように準備をしておきたい1型糖尿病の50歳代女性Qさん
【災害時の備え】
Qさんは、以前に日本で地震が起きたときに、病気がある方に十分な薬や食料品が届かず体調を悪くした方がいたと聞いて、もし災害が起きたら、自分もそのような状況に陥り困るのではないかと不安に思っています。
必要な備蓄品(食料品と日用品)はチェックリストをみながら準備しましたが、治療薬についてどのような備えが必要か、病院を受診したときに医療スタッフに確認することにしました。


治療に必要な薬や血糖測定にかかわる針やセンサーは普段から備えておくことが大切です。

もしもの場合に備える薬や血糖測定に使うものは、最低2週間分は確保しておいたほうがいいですね。

もしものときに備えてしっかり準備します。
災害はいつ自分の身に起きるかわかりません。東日本大震災のときは、薬が十分に供給されず体調を崩した方がいました。いざというときのために治療薬、治療に必要な物品は2週間分、日用品、食料品、水などは3日~2週間分を確保しておきましょう。
災害が起きたとき、糖尿病がある方は以下のような状況になりやすいといわれています。非常事態に陥っても落ち着いて対応ができるように、必要なことは事前に主治医に確認して準備しておきましょう。
1.血糖値の上昇
(要因)
- 炭水化物(おにぎり、パン、カップ麺など)中心の食事
- 活動量の低下
- ストレス
- 糖尿病治療薬の不足
2.血糖値の低下
(要因)
- 食料不足
- 復旧作業による運動量の増加など
3.重度の脱水の危険(特に高齢の方で、断水やトイレ事情などから水分摂取が不十分になりがちです)
(対応)
- 飲料水を確保し脱水を予防
- こまめに水分補給を行う
- 甘くない水分をしっかり摂る
4.電力供給が不安定な時期は、食事時間が日中に偏り、夜間は長時間の絶食状態となるため、低血糖の危険性が増加する
(対応)
- 血糖測定を行う(測定器を持っている方)
- ブドウ糖などの補食を準備して携帯する
- 食事内容や量の変化により血糖値が変動しやすいため、主治医に食事摂取量と飲み薬服用について事前に確認しておく
5.糖尿病がある方を含むすべての被災者に共通するが、女性・車中泊・長時間の無動状態は深部静脈血栓症や肺塞栓の危険因子となる
(対応)
- 水分補給をして脱水を予防する
- 長時間同じ姿勢で過ごさない
- 屈伸などでふくらはぎをよく動かす、手でマッサージする
6.持続する高血糖状態、免疫力低下、衛生状態の悪化などにより、感染症が増加する危険性がある
(対応)
- 手洗い、消毒の徹底
- 屋内の換気
- マスク着用
災害時や日頃の備えのチェックリストは「糖尿病の方の災害時の備え」をご覧ください。
おわりに
糖糖尿病との暮らしには、治療や介護、災害への備えなど、さまざまな工夫や支えが必要です。今回の事例が、ご自身やご家族の安心につながるヒントになれば幸いです。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル. 文光堂, 2024